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2019年6月11日

多余的話(2019年6月)    『雲上快晴』

井上 邦久

昨年の直下型地震・長雨・台風という体験から一年になろうとしています。
「天変地異」とか「驚天動地」というある種の畏れを持つことなく、地球温暖化と南海トラフ・プレート活動によるものだと受容し達観する姿勢が良いのかどうか?また、本来ならもっと驚くべきこと、許しがたいことが大量のCMのようなメディア操作によって、奇妙な既視感となり「そういうこともあるか・・・」と、納得と言う名の諦念で流されていく日々はやはり拙いだろうと思います。

4月末から5月にかけて、そのようなことを徒然に考えていたら、行く川の水のように時が流れてしまいました。源氏物語41帖の次は、『雲隠』というタイトルだけで本文が遺されていないことは知られています。
拙文5月号は『4月30日、舞洲にて』のタイトルでした。NPO「ロバの会」の視覚障碍者支援活動で舞洲に行きました。テーマパークUSJで賑わう桜島から橋を渡ったゴミ焼却場のある埋立地です。視覚障碍教師の会が催された会場施設でのお手伝い、舞洲から新大阪までの移動介助体験を中学生日記風に綴りました。サポートした教師は国立大学院で博士号を獲得し、米国留学を果たしてから現在は工業高等専門学校で健常者生徒に対して教鞭を執っているという経歴の人でした。闊達に話が弾む中で見えない世界で観えてくるものを教わりました。
視覚障碍教師との交流体験を通して感じた「言うべきこと」「伝えたいこと」を多く盛り込んだ文章でしたので「多余的話(言わずもがなの話)」としての発信を控えました。

4月29日も5月6日も月曜日の通常授業であり、ボランティア活動の2日間を加えると、実質的にはちょうど程よい4連休でした。かつて「アルバイト情報センター」とか「レジャーランド」と揶揄された時期もある大学の様変わりについては、藤代裕之さんが詳しく報告しています。
少しだけ内側から体験してみると、授業日数の確保・シラバス(授業計画・判定基準)の明確化・受講者が少ない講座お取り潰しなど、文科省の補助金行政の「投資対効果」目的が顕かになり、それを具現化して管理する大学もご苦労なことです。
そして、月曜日が祝日でも学生の出席率が高いことにも驚かされます。休日ダイヤで出講することに居心地の悪さを感じるのは新米教師だけのようで、「我々は一回生の頃から習慣化しています」と女子三回生にたしなめられたこともあります。

雲上快晴、雲下春霖のボストンに降り立ち、12℃まで冷え込んだ 夕暮れの街は大渋滞でした。二年ぶりの街並みを感慨深く眺めていたら「築85年のアパートもまだ新しいねと言われる街だから、二年くらいでは表面的な変化は見つけにくい」と言われました。
冷静な声の主である娘自身は、留学数年で運転技術とともにキャリアも進路も大きく変化させました。翌日にカレッジの卒業式、翌々日は大学全体の卒業式。メルケル首相の記念講演を目の当たりにする幸運にも恵まれました。
午前の卒業式では祝辞、名誉博士号授受とコーラスが延々と続いて退屈そうにしていたメルケル首相でしたが、午後からの講演では冒頭は英語で始め、詩人の言葉からドイツ語でオーラを高めていきました。
トランプ大統領の名を一度も口にしないトランプ批判演説と評されており、卒業生や父兄たちのスタンディングオベーションが続いたと報道されています(記憶では5回)。
同じく記憶では「CHINA」という単語も同様に発していません。午後の進行役が10年前の卒業生のMs.Wangと紹介されたこと、留学生のなかに中国人が目立って多かった記憶が残っています。
講演冒頭部分訳を添えます。メルケル首相が発したかった最大の「壁」とは? ベルリン?長城?ホワイトハウス?はたまた、各人の心の中の「壁」?https://courrier.jp/news/archives/163081/            (了)