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2014年5月14日

韓国(ソウル)中高校韓国人日本語教師へのアンケート結果・第1次報告  [その2] 日本への関心対象

井嶋 悠

 

2、日本への関心対象 [回答は、1人3項目以内]

 

[項目]

□ 思想  □ 宗教  □ 歴史  □ 自然  □ 政治  □ 経済  □ 教育

□ 医学  □ 工業  □ 農業  □ 漁業  □ 商業(ビジネス)  □ 技術

□ 音楽  □ 文学  □ 演劇(含む、古典芸能)  □ 映画(含む、アニメ)

□ 美術・デザイン  □ スポーツ  □ 言葉(日本語)  □ 茶道  □ 華道  □ 食べ物 □ ファッション  □ アニメ・漫画  □ その他

[回答数]

  1. 言葉(日本語)15
  2. 映画(含む、アニメ)13 〈別項の「アニメ・漫画」との合計〉
  3. 食べ物 8
  4. 音楽 6
  5. 歴史 5
  6. 教育 / 美術・デザイン 各4
  7. 経済 3
  8. 思想 / 自然 / 政治 / 技術/ 文学/ スポーツ  各1
  9. [その他]
    ・日本人 2
    ・社会と文化 1

 

 ・選ばれた項目とそれぞれの内容(理由)から、具体的記載等抄出

 

音楽

◆人を励ます歌の多さ(例:「世界に一つだけの花」「未来へ」など)

◆かわいくて面白い歌(例:「団子3兄弟」「トトロ」「崖の上のポニョ」など)

アニメ

◆独特の素材と音楽

◆多様なストーリー

美術・デザイン

◆シンプルで無駄のないデザイン

食べ物

◆おいしい

教育

◆日本の国語教育と社会教育

◆日本の日本語教育と英語教育、英語以外の外国語教育

思想

◆日韓交流に影響を及ぼす日本人の考え方

歴史

◆3 5年間、祖先を支配した日本への関心、また独島と歴史

◆過去の非をはっきりと認めることでの真の大国日本

政治

◆政治家の歴史否定に見る国粋主義的発言(例:独島、従軍慰安婦、歴史教科書問題など)

経済

◆戦後日本の経済復興と発展

社会と文化

◆日本人の生活方式の理解と韓国社会との比較

 

 

私 感 [上記項目の、「歴史」以下は、上記[日本語教師への動機]の「私感」と重なることが多いので、以下では触れない。]

音楽

「音楽は、古来神に最も近い芸術」と言われるように、私たちの心に平安と力を与える。

ソウル市郊外にある「独立記念館」で聞き、後に韓国人の仲間からいただいた、韓国の英雄たちを讃える荘厳で叙情性豊かなクラシック調の歌の数々が、忘れ
られない。

アニメ

海外での影響力は以前ほどではないそうだが、世界に通ずる作品として、「鉄腕アトム」「火の鳥」等々膨大な作品を描いた手塚治虫や、「どらえもん」「ドラゴ
ンボール」「セーラームーン」等々、限られた作品しか知らない私でもあり、ここでは、私の中で共感することが多い、現代日本を代表する(昨年、引退を宣言し
たが)人として、宮崎(みやざき)駿(はやお)(1941年生まれ)について、次の書からアンケートの趣旨、背景にも通ずる氏の言葉を幾つかだけ引用するに留め
る。
尚、これらの言葉は、三者の共有の言葉でもある。

  『時代の風音(かぜおと)』(1997年刊) [この書は、氏と作家の司馬遼太郎〈1996年死去〉及び堀田(ほった)善(よし)衛(え)〈1998年死去〉による対話集
  で、
 「20世紀とは」「国家はどこへ行く」「イスラムの姿」「アニメーションの世界」「宗教の幹」「日本人のありよう」「食べ物の文化」「地球人への処
方箋」の八章を立て、和気あいあい鼎談(ていだん)を展開している。]

心情的左翼だった自分が、経済繁栄と社会主義国の没落で自動的に転向し、続出する理想のない現実主義者の仲間にだけはなりたくありませんでした。」

日本は四等国でじつにおろかな国だったという話ばっかり聞きました。……ほんとうにダメな国に生まれたと感じ
ていたので村の風景を見ますと、農家のかやぶきの下は、……ありとあらゆる非人間的な行為が行われる暗闇の世界だというふうに思いました。
(略)
『アルプスの少女ハイジ』というテレビシリーズを作るために、スイスに行って帰ってきましたら、日本の景色のほうが自分が好きだったことに気づいた
 んですね。ずいぶんまわり道をせざるを得ませんでした。」

成金になるとしばらくの間、熱が冷めるまではしょうがないでしょうね。なんでも買いあさった挙げ句、もうどうでもいいやと思うようになるまでは。
イギリス人だってここへくるまでものすごく傲(ごう)岸(がん)な時代があったでしょう。」

「日本の経済活動の方向は、東アジア全体の現在を考えて取り組まないと、始まったばかりの流民の時代に、取り返しのつかないことになりそうでね。」

森と闇が強い時代には、光は光明そのものだったのでしょうね。でも、人間のほうが強くなって光ばかりになると、闇もたいせつなんだと気がつくわけ
です。私は闇のほうにちょっと味方をしたくなっているのですが。」

《参考》

・当時、アニメーション制作の7割、現場の感覚では9割が、韓国や中国制作、と氏は指摘している。

・刊行時前後の氏の作品

1988年 「となりのトトロ」    1989年 「魔女の宅急便」

1997年 「もののけ姫」      2001年 「千と千尋の神隠し」

 

以上の宮崎氏の言葉から、優れた創造(創作)者は、時代の予見者、先見者であることが、改めてよく分かるのではないだろうか。

美術・デザイン

ソウルの高校の韓国人日本語教師(女性)から、「今、日本では、柳(やなぎ)宗悦(むねよし)はどのように評価されていますか」と、質問されたことがある。

食べ物

私のひがみを承知してのこととして、とりわけ都市圏文化では「グルメ」と「セレブ」が、一対のような使われ方のように思えるが、そのような高級のものだけで
なく、市井の食べ物屋や一般家庭の味を知って、自身の「おいしさ」感について、「食べ物は人間生活で最も保守的」との言葉と併せて、してもらえれば、と私の
韓国食体験からも思う。

また日本の「B級グルメ」のあまりにも短期間での画一化傾向についてもどう思うのか。

教育

日韓の、国語教育・社会教育・外国語教育について、中高校の現場教員が意見交換することで、両国の学校教育の目標と現在、そして国家の関わり方が、浮かび
上がって来るように思える。
その負の一面としてある、自殺者数に関して、両国がいわゆる先進国中上位10位以内に入っていること、またいじめ問題について、問題点、改善策等で共有できる
のではないかとも思ったりする。

思想

日本と言うよりは、東アジアの思想になるかとは思うが、主に中国で使われた「家を出れば儒教、帰れば道教」との言葉が、私は非常に気に入っている。
それも一つの「ウチとソト」とも言えるのではないか。
日本で、七五三は神社、結婚式はキリスト教、葬式は仏教などと皮肉っぽく言われるが、仏教の中庸と無宗教という無尽性は、日本人が本来持っているはず?の、
人為の壁を超えた自然融合という理想の極致(エクスタシー)ともつながっているように思う。

 

日韓・アジア教育文化センターへの要望等

   以下の希望と励みとなる言葉の実現は、これまで日韓(また日韓中台)交流・会議に尽力して来たセンター関係者の脳裏には、資金調達の有無次第であるとの思い
が、直ぐに浮かぶのだが、同時に至難にも近い課題として紆余曲折、ここ数年を送っている。

○日韓関係が悪化している現在こそセンターの働きの大切さがあるのではないか。

○発展的韓日関係を望む日本語教師として、政治的な問題で葛藤が高まる悲しみの克服のために、センターがこれまで実施して来た交流と会議の再開への期待。