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2013年10月11日

本センター「文章表現教室(通信)」小学生対象の指導 ―指導の実際から―

森本 幸一(本センター委員・小学校教諭)

私が、Sさん(当時小学校2年)を、添削指導してもうすぐ一年となります。
Sさんは、この「作文教室」をどのように思っているのか気になります。
二年目ともなると、このまま同じようには続けられないでしょう。
その意味でも、この「文章表現教室」についての彼女の思いを知りたくなりました。
そこで、作文の課題を「作文について」としました。

すると、Sさんは、次のような作文を書いてくれました。
「作文について」            
①わたしは、先生からとどいた、かだいが書いてある紙をうけとったらやる日をきめます。
  ②7やる時になったら、だいを考えます。

その時は、ちょっとさぼります。お母さんに見つかったら、「こらー!あんた作文。」とおこられます。
③つぎに、文を考えながらかきます。これは、また、むずかしくて、さぼりまくりです。でも……
④さいごに、丸をかいておわると、「やったー!。」と言って、すっごくうれしいです。

こんな作文を、Sさんは、書いてくれました。

そこで、次のような返事を書きました。(この作文に関する事だけを引用)
少し春らしくなってきましたね。まだ、ちょっとさむいけれどね。作文うけとりました。
「作文について」
 とってもよく書けています。ぼくの作文のかだいがとどいたら、どん なふうにしてSさんが、作文しているかが、よくわかるからです。

「したこと」と、心で「思ったこと」が、よぶんなことばがなく、とってもわかりやすく書けているからです。
もうすこし、くわしく書きます。
①わたしは、…うけとったらやる日をきめます。すごいけいかくせい
②やる時になったら、だいを考えます。なるほど。そのあとがいいですね。

「ちょっとさぼります。」
そして、もっといいのが、「お母さんにみつかったら、…とおこられます。」

そのときのようすを、Sさんのそばでみているようです
でも、お母さんが読まれたら、こわいかも…(えへへ)。
③つぎに、のところは、ぜんぶとってもいいです

とくに、前のときは、「さぼります」で、こんどは、「さぼりまくり」なんだね。
この「さぼりまくる」と思っているかもしれないんだけれども、ほんとうは、

作文を書くときにとってもたいせつなところだよね。
「ああ書こうか、こう書こうか考えているところだもんね。
そして、そのあとの「でも……。」が、よすぎます
あとに何を書くのかなと、気になったよ。

④さいごに、 丸をかいておわると、…「すっごくうれしいです。」
(そうですか、そうですか。作文、きらいでなくてよかった。)と、ぼくが思うほど、Sさんの気もちがよくわかるように、書けていますよ。
〔つぎの作文のかだい〕
○さて、つぎの作文ですが、ちょっとむずかしいかもしれないけれど、やってくれるかな。
それは、「作文について」が、とてもよく書かれているので、それを、
もっともっとよくなるように、つぎのことに気をつけてもう一ど書くことです。

がんばってくれるよね。
それでは、どのように書くのか、言いますよ。

まず、大きく二つあります。
(一)その一つ目は、作文の書き方です。
  作文は、3年生ぐらいになったら、書く前に、どのようにかくか、考えます。
まず、作文を、「はじめ」「なか」「おわり」をどんなふうにして書くか考えます。
Sさんが書いた作文の①から④は、よく読んでみると、「なか」になります。
そうすると、「はじめ」と「おわり」にどんなことを書くか、です。

そこには、作文について思っていることを書きます。
たとえば、はじめは、わたしにとって作文を書くことは、「きらいのちすき」

「くもりのちはれ」です。とか、「すきなのか、きらいなのかわかりません。」とかね。

Sさんが、作文について思っていることを、まとめて書きます。
おわりも、おなじです。

いままで書いてきたことのさいごに、作文について書きます。
(だから)作文を書くのは、ちょっといやなんだけれども、なぜかすきなんです。

とか、さいしょは心のなかが「くもってしまうほどくるしいですが、書きおわるとはれるんです。」 とかね。

 

(二)二つ目は、「なか」のところです。
  このままでもとってもいいんですよ。
でも、もし、Sさんの気もちがもっとよくわかるようにするために考えてみてください。

たとえば、
①紙をうけとったときの気もちです。
「ああ、もうきた。」いやだなあ。とか、「やっときた。先生、いつも、かだいをおくってくるのがおそいんだから。」とか、「作文のかだいがいつくるかいつくるかと、まっています。」とかね。

②「お母さんにおこられた」あとの気もちを書いてほしいです。
「しまった。」とか、「お母さんごめん。」とか、「またやっちゃった。」
「みつかっちゃった。」とか思います。とね。または、お母さんに言われてからするのです(えへへ)。とかね。

 

いじょうです。

Sさん、がんばって書いてみてね。
このような文章を、Sさんに送りました。
そうすると、次のような作文が返ってきました。

「作文っていいな」 
わたしは、いつも、先生からファックスで、もらった次の作文のかだいが来る時うきうきします。
なぜかというと、次の作文のかだいが何か、早く見たいからです。だからとどいたら「つぎの作文は。」というところをさがして、そこを読みます。

それから、さいしょから読みます。
つぎに、やる日をきめます。
つぎに、やる日になるとやります。その時、心の中で、(今日はどう書こうかな。)と思います。
そして思いついたら、だい名と、文を書きます。
その時に、ちょっとさぼって弟が見ているDVDをよこから見て、お母さんに見つかったら、「こらー!あんた作文は、」と言われます。
そうすると、ごまかします。どうやってかは、「お母さん今日の夜ごはん何。」と言います。
丸をかいて、さい後は、終わります。だから、わたしは作文が好きです。
このような作文を受け取りました。
書き出しは、ずいぶんよくなっていました。
最後の二行は、前の方がよかったのですが、今回は、これで満足としましょう。
そこで、私は、次のような返事を書きました。

○「作文っていいな」
がんばって、書きなおした作文、前の作文もよかったけれど、もっとよくなりました。
それは、作文の「はじめ」にあたるところが、「なぜ、作文っていいのか」が、

とてもよくかかれているからです。Sさんが、作文のかだいが来る時を、「うきうきして」まってくれているということは、ぼくにとって、とってもうれしいことです。
これからも、作文を書く時は、「はじめ」「なか」「おわり」を考えて書いてくださいね。

とまあ、こんな具合です。
私の文章表現教室を知らせる「窓」から、少しはその様子をお伝えできたでしょうか。
文章表現教室、あせらずやっていこうと思っています。